千景くんは魔法使い
「ねえ、ちっち。どうやって窓の鍵を開けてるの?」
気を引くために、ふわふわの羽根がついている猫じゃらしを近づける。
前はすぐに飛び付いてきたのに、ささみ同様に興味は薄くて、ちっちは無視してペロペロと毛繕いをしていた。
部屋の鍵は上下するトリガーだけではなく、防犯対策でサブロックもかけられている。
開錠するためにはトリガーを上げてサブロックを右から左にスライドさせなければいけない。
ちっちは賢いから私の手つきを見てやり方はわかっているかもしれないけれど、猫の手で開けることはどう考えても不可能だ。
「ねえ、教えてよ」
「ニャーン」
あくびをしながら、そんなの教えないと言っているかのように小生意気な顔をしている。
かまってほしくて色んなおもちゃを並べてみたのに、外で遊んできたちっちは疲れてしまったのか、クッションを占領するように丸くなって寝てしまった。
もう、つれないんだから。