千景くんは魔法使い
「これからよろしくね」
私は2階にある自分の部屋に上がって、ベッドに横になりながら猫の頭を撫でていた。
「ニャアア」
「ふふ、きみの毛はふわふわだね」
自分が猫を飼うことになるなんて想像もしてなかったけれど、今は可哀想じゃなくて家族として可愛いと思えている。
……そうだ、名前。名前を考えなくちゃ!
「なにがいい?」
「ニャア?」
私が首を傾げると、猫も一緒になって首を曲げている。
黒猫だからクロとか?
それとも小さいからチビとか?
うーん、なんか普通すぎてしっくりこない。
――『ふたりだけの秘密ができたね』
なぜか突然、千景くんの顔を思い出して、顔の温度が上がっていく。
そういえばこの猫、少しだけ千景くんに重なる。ビー玉みたいに吸い込まれそうな瞳とか、黒髪に黒色の学ランと、黒がとても似合う千景くんにそっくりだと思った。
「千景くんとか、どう?」
冗談で猫に聞くと、「ニャアアン!」と元気に鳴いた。
もしかしたら気に入ってくれたのかもしれないけど、さすがに千景くんという名前を付けることは恥ずかしすぎる。