千景くんは魔法使い
校則ではスマホを持ってきてもいいけれど、校舎内で触ることは禁止されていた。
それでもあまり守ってる人はいなくて、みんな先生にバレないようにいじっているし、私に声をかけてきた女の子も手にスマホを持っていた。
「ちょっと、浮かれすぎなんじゃないの?」
話したこともない女の子たちは、私のことを囲むように集まってきた。
なんだろう、すごく怖い……。
「昼休みにさ、千景くんと一緒に中庭にいたでしょ?」
そう言って、スマホの画面を私に向けた。そこには私と千景くんが花壇の前で話している写真が映っていた。
……いつ撮られていたんだろう。全然気づかなかった。
「席替えでも隣になったって噂だし、大人しいふりして千景くんと仲良くしようとしないでよ!」
「わ、私はべつに……」
まるで言い訳は許さないって雰囲気で、5人いる女の子全員に睨まれてしまった。
「千景くんもあんたみたいな地味な子に懐かれたら迷惑だと思うよ」
「そうそう。千景くんの品格が落ちるし、自分でも図々しいことしてるってわからないの?」
「普通は気づくよね。暗いうえに勘まで鈍いんだ」
バカにされるように笑われて、私は唇をぎゅっと結ぶ。なにも言い返すことができない。
女子たちはまだ言い足りなそうにしていたけれど、騒がしいことに気づいた先生が寄ってきたので、それ以上なにかを言われることはなかった。