千景くんは魔法使い
「あ、桃、聞いてよ。この子がさ、千景くんにちょっかい出してるらしいから、そういうのはやめたほうがいいよって注意してたところ」
どうやら女の子たちと桃園さんは友達のようだ。
「ちょっかい?そんなことしてるの教室でも見たことないけど」
「教室じゃなくて隠れてしてるんだって。あとで写真見せてあげるよ!昼休みに中庭で千景くんに言い寄ってたんだから」
……言い寄ってなんかないのに。
すると、私の気持ちを代弁するように桃園さんが強く言う。
「でも、べつに小野寺が誰と一緒にいても、みんなには関係ないことじゃない?」
その言葉を聞いて、女子たちの表情が曇っていた。
「え、待って待って。私たち友達じゃん。なんでそんなこと言うの?」
「間違ってると思ったから」
「は?じゃあ、なに?桃は私たちよりこの子の味方をするわけ?」
「そうだって言ったら?」
ど、どうしよう。私のせいでピリピリとした空気になってる。
しかも桃園さんまで冷たい目で見られてるし、桃園さんはなんにも悪くないのに……。
「だったら、桃はこの子と一緒にいれば。もううちらは遊びとか誘わないからね」
女子たちは怒ったように、そそくさと私から離れていった。