千景くんは魔法使い
「大丈夫?」
桃園さんのほうが大変なことになってしまったのに、私のことを心配してくれている。
「ご、ごめんなさい……私のせいで」
「べつにいいよ。元からうわべだけの仲って感じだったし」
「ダ、ダメだよ……。私、すぐに言ってくるから」
「言うって、なんて?」
「私と桃園さんはなんの関係もないって……。私なんかと桃園さんは友達じゃないし、だから仲直りしてくださいって……」
私が原因でケンカをしてほしくない。
「あのさ、自分のこと、下げたように言うのやめなよ」
「……え?」
桃園さんは怒っているというより、叱っているような目をしていた。
「そんなんだから周りになめられるんだよ。悔しくないの?」
「………」
私はなにも言えなかった。
そのあと体育が終わり、みんながぞろぞろと教室に帰っていく中で、私だけがこの場に留まっていた。
引き寄せられるようにして入ったのは、体育倉庫。そこには跳び箱や得点ボート、三角コーンなどが置かれている。
おばけが出そうなほど不気味な場所だというのに、私はマットの上でちょこんと膝を抱えた。