千景くんは魔法使い


小学生の頃、リーダー格の女子に目をつけられて、体育倉庫に閉じ込められたことがあった。

閉鎖空間ではあったけれど、大声を出したり、窓から助けを呼べばすぐに誰かが気づいてくれたかもしれないのに、私はただその状況をなにもしないで受け入れていた。

うじうじするだけで、ろくに会話も成立しない私は、こうされても仕方ないと思っていたから。

……あの時、結局、倉庫の扉が開いたのは、たまたま三角コーンを使いに来た先生だったっけ。

――『悔しくないの?』

また桃園さんの声が聞こえた気がした。

悔しいかどうかも、私はわからないや……。

キーンコーンカーンコーン。

校舎で鳴っているチャイムが倉庫に聞こえてきた。

6時間目、始まっちゃった……。

と、その時。ジャージのポケットに入れていたスマホが振動した。


【今どこにいるの?】

それは千景くんからだった。

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