千景くんは魔法使い
連絡先を交換したとはいえ、千景くんからメッセージがくるとは思ってなかった。
おそらく教室に戻ってこない私のことを心配してくれたのだろう。
なんて返事をしよう。無視はしたくないし、嘘も付きたくない。私はぎゅっとスマホを握りしめた。
【体育倉庫だよ】
こんなところに閉じこもって反省してるなんて、私は一体なにをしてるのかな。
こんな自分が嫌すぎるのに、変われない。
ああ、悔しいって、こういう気持ちだ。
膝を抱えて顔を埋めていると、前触れもなく重厚な扉がガラッと開いた。
「ひとりでなにしてるの?」
私は目を丸くさせる。それは千景くんだった。
「……え、じゅ、授業は?」
「腹痛って言って抜けてきた」
千景くんはそう言って、倉庫に入ってきた。
今まで薄暗いだけの空間だったのに、千景くんが来たことでパッと明るくなったような錯覚がしてくる。
千景くんはなにも言わずに、私の隣に腰を下ろした。ひとりでここにいる時点で、なにかあったのだろうと、察してくれているようだった。