千景くんは魔法使い
「おーい、遠山。ちょっとこれを教材室に運んでおいてくれないか?」
三時間目の休み時間。私は先生に手招きをされた。先生はさっきの授業で使った社会科の資料をたくさん抱えている。
「頼むな」
「……え」
まだやると言っていないのに、強制的に資料を押し付けられてしまった。
きっと私は先生にとっても文句ひとつ言わない真面目な生徒に見えているんだろう。
……こういうのって、普通は日直の人がやるんだけどな。視線を今日の日直の人に向けたけれど、女の子も男の子も楽しそうに友達と喋っていた。
ダ、ダメだ。邪魔したら悪い。
「わ、わかりました。運んでおきます……」
私はしぶしぶ返事をした。
面倒くさいけれど、どうせ暇だし、教室にいたってとくにやることはない。
教材室は廊下の突き当たりにある。両手がふさがっていたので、行儀悪く足で扉を開けた。
教材室には授業で使う資料や道具がたくさん置かれていた。
けれど他の教室とは違い、物置小屋のようになっているここは日中でも薄暗い。
どこにでも学校の七不思議的な話は付きものだけれど、音楽室や理科室に続いて、ここもおばけが出るという噂がある。