千景くんは魔法使い
放課後。私はジャージに着替えて再び体育館に向かう。
三年生がいない部活は二年生が中心となって準備運動をして、各々にダブルスを組んだり、壁打ちをしたりする練習がはじまった。
私はいつものようにラケットだけを持ってひとりでいた。
桃園さんは仲間たちと一緒にネットを張っている。
私と桃園さんは友達じゃない。だからなんの関係もないと言った時、とても胸が痛かった。
桃園さんは私のことをかばってくれたのに、私は臆病だから突き放すだけ。
今だって、私は周りの目をひどく気にしている。
私と仲良くしたら、桃園さんまで悪く言われてしまうかもしれない。
こんな人がたくさんいる前で話したりしたら……迷惑になる。
――『本当にそう思ってる?』
千景くんに言われたことが、頭の中でこだましていた。