千景くんは魔法使い


自分の心に嘘をつかずに正直になっていいのなら……。

本当は私のことをかばってくれて嬉しかった。

本当は私も一緒にバドミントンの練習がしたいって思ってた。

千景くんの言うとおり、ひとりが楽なんて本当は思っていない。

私も学校で楽しくお喋りしたいし、朝もおはよう、ばいばい、また明日って言いたいし、周りのことなんて気にしないで笑いたい。

ううん、私は、私はね……。

一緒に笑い合える友達がずっとほしかったの。


「……も、桃園さん!!」

体育館全体に響くくらいの声で桃園さんの名前を呼んだ。

一瞬にしてざわざわとみんなが私のことに注目してる。

怖くなって、また臆病者な私になりかけていると、ふと手の中に〝あるもの〟の感触を感じた。

広げると、私は一本のシャトルを握っていた。

そこに温かさを感じて、千景くんの魔法だと気づいた。


もしかして、どこかで見てる?

きっと、そうに違いない。

千景くんの「頑張れ」という声が聞こえた気がした。


「た、体育の時、私のことをかばってくれてありがとう!それからいつも声をかけてくれて、ありがとう……!」

声が上擦る。足も震えてる。

でも、もう怖くない。

たとえ上手に喋れなくても、きっと心は届くはずだ。


「だから、だから……っ、私と一緒にラリーの練習をしませんか?」

千景くんからもらったシャトルを桃園さんに差し出した。

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