千景くんは魔法使い
千景くんの✫*゚☆.*。✫なやみ
学校が休みの週末。お父さんは休日でも仕事だし、お母さんは夕飯の買い物に出掛けた。
私はというと、とくにやることもないので部屋でゴロゴロとのんびりしていた。
すると、部屋の片隅でガサガサという物音がする。私は不自然に動いているエコバッグに近づいた。
「もう、ここに入ったらダメだっていつも言ってるでしょ?」
「ニャア?」
「そんなに可愛い顔しないでよ。〝ちっち〟はこのバッグが好きなの?」
そうだと言っているかのように、ちっちは喉を鳴らしていた。
ちっちとは、先日家族の一員になった猫の名前だ。
心の中でひそかに千景くんと名前を付けていたけれど、さすがに口に出すのは恥ずかしいと思い、ずっと『ちー』とか『ちーくん』って呼んでいた。
それが日に日に変化していった結果、愛称も込めて〝ちっち〟という名前に決めたのだ。
ちっちはイタズラ好きで、毎日家の中を駆け回っている。
けれど、なぜか私のエコバッグがお気に入りのようで、隠れて忍び込んでは大人しく寝ていることもある。
「ニャア、ニャア」
急に鳴き出したかと思えば、ちっちは部屋の窓から見える鳥を追いかけようとしていた。
「もしかして外出たいの?」
「ニャアーン!」
「うーん、でも……」
リードを付けてさんぽさせるわけにいかないし、抱っこをして外に出るにしても、暴れてしまう可能性もある。
「こんなに天気がいいんだから出たいよね……。あ!」
私はちっちに外の空気を吸わせてあげる方法を思いついた。