千景くんは魔法使い


「やってみて」

こんなにドキドキさせておいて、できるわけないでしょ!と思いながらも、私は石を投げる。

すると、石はダイヤモンドみたいな水しぶきをあげて水面を跳び跳ねている。

それはもう、不自然なくらいに。

私って、もしかして水切りの才能があるかも、なんて自惚れそうになったけれど、こんなに石が踊るみたいに動くはずがない。

「もう、千景くん!魔法使ってるでしょ!」

「うん、バレた?」

「こんなにぴょんぴょん跳ねてたら普通に気づくよ」

「だって、さっきうさぎのパン美味しそうに食べてたから」

千景くんが無邪気に笑う。

私が緊張しなくなってきたように、だんだんと千景くんとの距離も近くなってきてる気がする。

千景くんに対しての、このあたたかな気持ちはなんだろう。

きみにしか芽生えない心の動きを、私はたしかに感じていた。

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