千景くんは魔法使い
……お、おばけとか、無理。
出るかもしれないと思うと、ますます怖くなってきて、私は急いで棚に資料を戻していった。
……えっと、日本地図の場所は……。
視線を棚の一番上に向ける。そこには絵巻のように巻かれている他の地図が置かれていた。
あんなところ、届かないよ……!
きょろきょろと周りを見渡してみても、踏み台になりそうなものはない。
「ん、んーっ」
一生懸命に背伸びをして置こうとした時、乱雑に積み重なっていた本が私に向かって落ちてきた。
ぶつかる……と思い、とっさに目をつむる。
……あ、あれ、落ちてこない……?
ゆっくりと目を開けてみると、私の頭に当たる寸前で本が止まっていた。
「……え?」
ビックリしていると、私の後ろから手が伸びてきた。おばけ……!?と思い、悲鳴を上げそうになる。
「大丈夫?」
けれど聞こえてきたのは、おばけにしては優しい声。
ゆっくりと顔だけ振り向くと、後ろにいたのは千景くんだった。
「……え、あ」
なんで千景くんがここに?
上手く質問もできないまま、千景くんは本を棚に戻してくれた。それは、私の頭に直撃しようになっていた分厚い歴史の本だ。