千景くんは魔法使い
「ねえ、どこの職場に希望出す?」
グループごとに席をつけて話し合いをしてるので、桃ちゃんは私の隣にいる。
体験できる職場は学校の近くから、街の中心部までと決められているらしい。
範囲が限定されているとはいえ、職場は市役所、消防署。スーパーマーケットや和菓子屋に老人ホームと、すでに職場体験の受け入れを許可してくれている場所がいくつもある。
男子の人気は消防士。女子は甘いものが食べられそうだからと和菓子屋の希望が多いようだ。
「千景くんは、どこか行きたい場所ってある?」
「俺はとくにないよ。遠山さんは?」
「うーん……」
私は職場体験のリストを見る。
せっかくなら楽しそうなところがいいなって思うけど……あ。私はある職場の名前を見て惹かれる。
それは、通学路の途中にある幼稚園だった。
私の登校と園児たちの登園時間が同じだから、よく見かける。みんなとても元気で、可愛いなって思いながらいつも見てた。
「あ、幼稚園いいじゃん!私、子供すき!」
桃ちゃんが私の視線に気づいてくれた。
他の男の子たちはなんでもいいと言っているので、あとは千景くんの意見だけ。
「うん。俺も幼稚園いいと思う」
千景くんも乗ってくれた。
幼稚園は他のグループからの希望がなかったので、すぐに私たちの体験場所が決まった。