千景くんは魔法使い



「ねえ、さっきの話の続きなんだけど」

授業が終わり音楽室から教室に戻ろうとすると、千景くんに呼び止められた。


「俺、洋楽が好きなんだけど、このアーティストわかる?」

そう言って、スマホの画面を見せてきた。わからないと首を横に振ると、「CMとかで流れてるから聴けばわかるかも」と、千景くんはスマホに繋いでいるイヤホンの片方を差し出した。


「え、私が聴いてもいいの?」

「はは、当たり前じゃん」

その言葉に甘えて私はイヤホンを右耳に入れる。千景くんも同じように左耳にイヤホンを装着していた。


「流すね」

スマホをタップすると、イヤホンから曲が聞こえてきた。

たしかにそれは聴いたことがあるメロディーで、テンポのいい元気が出るような曲だった。

千景くんが好きな音楽を、千景くんのイヤホンを半分ずつにして聴いている……。

なんだか千景くんの世界に入れてもらっているような気分になって、曲と同じように心も躍っていた。

< 61 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop