千景くんは魔法使い
そして放課後。部活が終わってもまだ外は雨だった。
さらにしっかりと置き傘をしていたのに、どういうわけか教室にない。
誰かに盗まれたのか、あるいは特徴もないビニール傘なので間違われてしまったのかはわからない。
……どうしよう。困ったな。
私は昇降口の前で、途方に暮れていた。
走って帰ろうかな。でも制服が濡れちゃうし、せめてまたジャージに着替えて外に出ればなんとか帰れなくもないだろうか。
「入ってく?」
と、その時。後ろから声がした。
「え、な、なんで……」
なぜか千景くんが傘を持って立っている。
「図書室で本読んでたんだ。そしたらこんな時間になってた」
「そうだったんだ」
「それで、どうする?」
千景くんは傘をパサッと広げた。