千景くんは魔法使い


「なんか、トロそうなやつ」

すると、私たちのために名札を付けてくれている園児のひとりが声を飛ばしてきた。

それは〝そうまくん〟という男の子だった。

5歳の子にトロいって言われちゃった……。

ショックを受けている暇もなく、園児たちとの触れあいはすぐに始まった。

朝のうたを一緒に歌い、机で折り紙をやることになった。各グループごとにひとりずつ付くことなり、私が担当した机にはそうまくんもいた。

「花奈せんせいのツル、上手だね!」 

隣にいる女の子が無邪気に声をかけてくれた。

……先生なんて呼ばれると、ちょっとくすぐったい。

幼稚園児ってもっと小さくてなにもできないようなイメージを持っていたけれど、年長クラスになると、みんな自分の意思を持っていて驚くくらいしっかりしていた。

「私にもツルの折り方、おしえて」

「うん、いいよ。何色で折る?」

ああ……可愛い。ものすごく癒される。

チラッと千景くんのことを見ると、同じように折り紙を園児たちに教えていた。

「千景せんせいって、イケメンだね」

「私、千景せんせいの隣に座りたい!」

「ダメ!せんせいは私の隣!」

な、なんだか、女の子たちが千景くんのことを取りあっている。

今の子ってませているというか……私よりも積極的ですごい。

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