千景くんは魔法使い


その様子に呆気に取られていると、誰かから頭を叩かれた。

「出たな。妖怪トロイマン!」

それは、そうまくんだった。そうまくんは折り紙を丸めて剣を作ったようで、乱暴に攻撃してくる。

「トロイマン、勝負だ!」

「え、あ、危ないから落ち着いて」

「えい!トロイマンがペチャパイに進化した」

「ペ、ペチャ……っ」

元気いっぱいのそうまくんのことは慣れている保育士さんが止めてくれた。

私が振り回されている様子を見ていた千景くんがクスリとしている。

ペチャパイって、絶対に聞かれた。うう、恥ずかしい……。

折り紙をしたあとは、みんなで外遊びをすることになった。

室内でも元気いっぱいだった園児たちは外だとますますパワフルだった。

女の子たちは砂場で遊んでいて、男の子たちはサッカーボールを蹴っている。

同級生の男子ふたりは一緒になってサッカーをやっているのに、千景くんはその中にいない。まるでサッカーから離れるようにして、女の子と砂場にいた。

私が部活に馴染めなくて友達もいなかった時、千景くんがその背中を押してくれた。

本音を言えずに言葉を押し込めるだけの私に、本当の気持ちは?って、聞いてくれた。

千景くんがいたから、私は桃ちゃんと友達になれたし、学校も楽しくなれた。

じゃあ、千景くんの気持ちは?

千景くんは……本当にサッカーを遠ざけたままでいいの?

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