千景くんは魔法使い
「……っ」
私は助けるために道路へと飛び出した。
そうまくんのことをぎゅっとする頃には、車は目の前まで来ていた。
……あ、ぶつかる。
避けられないと思い、目をつぶると、体が一瞬だけふわりと浮いたような感覚がした。
私はおそるおそる目を開ける。
「……ハア……ハアッ」
息づかいとともに、私は後ろから抱きしめられていた。
「……なにしてんだよっ!!」
辺りに響くくらいの怒鳴り声。
今まで見たことがないほど怒っていたのは、千景くんだった。
道路の真ん中にいたはずの私とそうまくんはなぜか歩道にいた。
私たちに向かって走ってきた車は一瞬だけブレーキをかけて停まったけれど、なにが起きたのか理解できない様子でそのまま行ってしまった。
「ご、ごめんなさい。そうまくんを助けようと、私……」
今さら怖くなってきて、足が震える。
「……っ、うわああん!」
そうまくんも驚いてしまったのか泣き出した。
きっと状況は理解できてないけれど、自分のせいで車に轢かれそうになったということだけはわかっているようだった。
「どうしたんですか……!?」
そうまくんの泣き声を聞いて、やっと保育士さんたちが来てくれた。