千景くんは魔法使い


「そ、そうまくんがボールを追いかけて外に……。でもケガはありません。ちょっと驚いたみたいです」

「そうですか。すみません。私たちの不注意でした」

保育士さんはそうまくんを抱っこして、園の中へと連れて行ってくれた。

心臓がまだバクバクしてる。

きっと千景くんに助けてもらわなかったら、ケガだけじゃ済まなかった。


「ありがとう、千景くん、本当に」

「ううん、俺のほうこそ感情的に怒鳴ってごめん」

千景くんは私のために怒ってくれた。きっと必死になって魔法を使ってくれたに違いない。

「もう絶対に無茶なことはやめてよ」

「うん、もうしないよ」

私たちも園に戻るために歩きだす。

すると、カザッという靴音と一緒に桃ちゃんが同じ歩道にいた。

騒ぎを聞いて来てくれたのかなと思いきや、桃ちゃんの様子が少しおかしいことに気づいた。

「桃ちゃん?」

「……さっきの」

「え?」

「さ、さっき瞬間移動したよね?」

その言葉に、私と千景くんは顔を見合わせる。

なんと、道路から歩道へと魔法を使って移動した場面を桃ちゃんに見られていた。

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