千景くんは魔法使い
職場体験が終わり、その帰り道。私は千景くんと桃ちゃんと帰っていた。
あのあとそうまくんはまた元気になって給食を食べていた。
配膳は私と桃ちゃんが行ったけれど、その時は普通に会話をするだけで魔法のことについては触れられなかった。
でも三人になり、なんだか気まずい空気が流れているのは気のせいじゃない。
「あのさ、色々と聞きたいことがありすぎるんだけど、アレってどっちがやったの?」
桃ちゃんのアレが瞬間移動を指していることはすぐにわかった。
「俺だよ」
千景くんの返事は即答だった。
千景くんは魔法を悪用したりしないけれど、きっと使えるということはあまり知られないほうがいい。
逆に見られたのが桃ちゃんで良かったと思う反面、やっぱり千景くんはバレたくなかったというような顔をしていた。
「ふーん、そっか」
桃ちゃんは私たちが拍子抜けするくらい、あっさりとしていた。
「そっかって……それだけ?」
千景くんも目を丸くさせている。
「いや、正直言うと、どうやって瞬間移動したの?とか、他にもなにかできるの?とか、小野寺って何者?って聞きたいよ。でも、小野寺は花奈のことを守ってくれたし、そのおかげで事故が防げたっていう事実だけでいいのかなって思ってる」
幼稚園にいた時はなんにも聞いてこなかったけれど、きっと桃ちゃんなりに考えてくれていたのだと思う。