千景くんは魔法使い
飛んでみたいと素直に答えると、千景くんはにこりと微笑んだ。
「じゃあ、今度人目につかない時間を狙って飛んでみようか?」
「え、いいの……!?」
童心に返ったように胸が弾む。
「うん。夜のデート」
「デ、デート?」
私はその言葉に、過剰に反応してしまった。
デートなんてしたことない。ましてや千景くんとできるなんて……。
わかりやすく緊張してきた私は不自然に前髪を触って誤魔化す。そんな姿を見て、千景くんはわざと首を傾けて私の顔を覗き込んできた。
「花奈さえ良ければ俺は昼間でも映画館とか買い物とか行きたいって思ってるんだけど?」
千景くんの射るような瞳に、私は顔が沸騰しそうになっていた。
千景くんは私のことを名前で呼ぶようになってから、少しだけ変わった。
前よりも心を開いてくれてるような気がするし、私のことを見る視線もよりいっそう優しくなっている。
私も気持ちを自覚してから、千景くんへの〝好き〟がとまらない。
自分が恋をするなんて想像もしていなかったけれど、千景くんを好きになってからの世界は、なにもかもがピンク色に見えるほど輝いていた。