千景くんは魔法使い
「は?関係ないやつは入ってくんなよ」
真田くんが鋭い目つきを向けてきた。
「か、関係ないことはないです。私は千景くんの……」
「ああ、彼女だから?だったら良いこと思い付いた」
「え、ちょ、ちょっと……っ」
千景くんの手を掴んでいたはずだったのに、私は引き剥がされるようにして、真田くんにグイッと肩を引き寄せられた。
「お前も俺から大事なものを奪ったんだから、俺もお前の大事なものを奪ったっていいよな?」
真田くんは挑発するように、千景くんのことを見ていた。
「や、やめろ。花奈には手を出すな」
「へえ、花奈って言うんだ。俺、前の彼女と別れたばっかりだし、今相手いないからちょうどいいわ」
真田くんはさらに私の肩を強く自分のほうに寄せてきた。抵抗したくても力が強くてびくともしない。
「や、やめて。離して……」
「暴れるなよ。小野寺より俺といたほうが絶対に楽しいから」
「イヤっ!」
この人は私になんか興味はない。ただ千景くんが嫌だと思うことをしたいだけだ。
なんとか逃げようともがいていると、突然、太陽が隠れて、辺りが薄暗くなった。
それと同時に、足元から地鳴りのような振動が伝わってくる。
「……な、せ、花奈から手を離せ!」
千景くんの声とともに、コンビニの窓ガラスがバリンッ!と割れた。「きゃー!」と、店内にいた人が驚いて外に出てくる。
地鳴りがひどくなるたびに、電線が激しく揺れて、コンビニの前に置かれていた自転車も倒れた。