千景くんは魔法使い


「実はこの子ね、小さい頃はとても体が弱くて、こうして倒れてしまうこともたびたびあったのよ。だからいつも家の中ばかりで過ごしていた時期があってね……」

そう言って、千景くんの寝顔を見ながら、ぽつりぽつりと話してくれた。


「でも小学生の時にサッカーをやるようになって、とても明るくなったの。ちょっといろいろあって今は辞めてしまってるけどね」

たしか千景くんは、サッカーを辞めたのと同時期に魔法が芽生えたと言っていた。

どうして千景くんは魔法使いになったんだろうか。

今まで考えてこなかった疑問が浮かんだ。


「そのせいもあって、ずっと塞ぎこんでいたけど、さっき花奈ちゃんが笑っていると教えてくれて、少し安心したわ。これからも千景と仲良くしてね」

「は、はい。こちらこそ」

千景くんのお母さんはまだ用事が済んでいなかったようで、すぐに戻ると言って出掛けていった。

部屋では、千景くんとふたりきり。

今さら千景くんの部屋にいることにドキドキしてきたりして。私は緊張で足を崩すことさえできずにいた。


「……花奈?」

と、その時。眠っていた千景くんが目を開けた。

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