千景くんは魔法使い
「千景くん、大丈夫……!?」
慌てて傍に行こうとすると、足が痺れていたようで、そのまま千景くんのベッドに倒れてしまった。
「花奈こそ、大丈夫?」
寝ている千景くんに受け止められた。
……か、顔が近い。
それはお互いの息づかいがわかるほどに。
ドキドキしすぎて私のほうが貧血を起こしそうになっていた。
「ご、ごめんなさい。足が痺れちゃって……」
「おっちょこちょいだね」
千景くんはクスリとして、ベッドから起き上がった。青い顔をしていた千景くんの顔色は元に戻っている。それを見てホッと胸を撫で下ろした。
「っていうか、なんで花奈が俺の部屋にいるの?」
「倒れたこと、覚えてない?」
「俺が……倒れた?」
どうやら真田くんに会って、私が触られてたところまでは記憶していても、そのあとのことはまったく覚えていないそうだ。
「千景くん、魔法を使ってたよ。それもわからない?」
「……うん。なにがあったかちゃんと教えてくれない?」
私は千景くんの希望どおり、コンビニのガラスが割れたことや自転車が倒れたこと。そして、千景くんの体が光って見えたことをすべて伝えた。
千景くんは戸惑いながらも、自分の右手をじっと見つめていた。
少し怖いと感じたあの時の魔法は、やっぱり千景くんの意思ではなかったようだ。