千景くんは魔法使い
「うわ、天使……!」
赤ちゃんの頃から保育園までの写真は、女の子に見えるほど目が大きくて、肌も透明みたいに白かった。
「何回もおじさんに拐われかけたよ」
「そうだろうね。可愛すぎるもん」
ページが進むたびに千景くんは成長していって、小学生になると可愛いからカッコいい顔になっていた。
そして、私はある写真のページを見て目を止める。それはサッカーチームのユニフォームを着てる千景くんだった。
「全部、笑ってる顔ばっかりだ……」
髪の毛はさっぱりと短くて、日焼けもしている。今の千景くんと違ってスポーツ少年のような雰囲気で、どれも白い歯を見せてる満面の顔だ。
「実際にやってる時は楽しかったからね」
千景くんは当時を思い出すような、遠い目をした。
私はさっき彼のお母さんに、千景くんは笑っていると伝えた。
でも、違う。サッカーをやってる千景くんは本当に心の底から笑っているように見えた。
「この頃に、花奈に出逢えていたら俺は間違えずに済んだのかな」
「後悔……してるんだね」
「してるよ。チームがなくなったって聞かされてからなおさらに。俺は恨まれても仕方ない。そのくらいひどいことをしてしまったから」
なにが正解で、なにが不正解かなんて私にはわからない。
でも体が弱くて家の中で遊んでいた千景くんがサッカーに出逢い、そこで外の楽しさを知った。
きっと今までにないくらい嬉しくて、気持ちも満たされていたと思う。
だからこそ向上心がついて、もっと強くなりたいと目標もできた結果……熱くなりすぎて、仲間たちのとの間に溝が生まれてしまった。