千景くんは魔法使い


「ふう、なんか今日はいろいろあったな」

夜。ご飯を食べてお風呂に入ったあと、髪の毛も乾かさずにベッドへと倒れこんだ。

【中途半端なさんぽになっちゃったから、またべつの日に埋め合わせさせて】

スマホを確認すると、千景くんからメッセージが届いていた。

【ありがとう。千景くんも今日は早く寝てね】と返信を打って、私は天井を見上げる。


――『花奈から手を離せ!』

あの時の千景くん、体が光っていた。それも魔法が原因だったのかな?

なんだか千景くんも気にしてるみたいだったし、あえてその話は深くしなかったけれど、やっぱり心配だ……。

ウトウトとしてきた睡魔に逆らうことなく目を閉じていると、どこからか声が聞こえてきた。


「……は、な」

……誰?千景くん?

「……ちゃん、花奈ちゃん」

花奈ちゃん?千景くんじゃない……。


「ねえ、花奈ちゃんってば!」

その声に、私は慌てて飛び起きた。


「え、だ、誰?」

可愛らしい子供みたいな声だ。周りを見渡しても子供はいないし、そもそもここは私の部屋だ。誰かいるわけがない。それでもたしかに今……。

「こっちだよ、花奈ちゃん」

「……え?」

声がしたほうに視線をずらすと、そこにはちっちがいた。

ちっちは自分専用の丸いベッドの中で、私のことをじっと見てる。

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