千景くんは魔法使い
「……あはは、まさかね」
笑って誤魔化そうとすると、「名前を呼んだのは僕だよ」と、ちっちがはっきりと喋った。
「……ひぃっ」
驚きすぎて後退りをすると、足の小指を思いきりテーブルにぶつけてしまった。
「大丈夫?」
……ち、ちっちが喋ってる?
これは……夢かな。それにしては小指が痛いという感覚がある。
「そんなに驚かなくても大丈夫だよ。千景くんの魔法がちょっと僕に当たっただけだから」
「そ、それって……コンビニの時?」
「そうそう」
たしかにあの時は、あちらこちらに魔法が飛んでいたし、私の傍にいたちっちに当たっていても不思議ではないけれど……。
「ま、待って。それってお昼の話だよ。それからちっちはずっと喋れたってこと?」
「うん」
「じゃあ、なんで千景くんの家にいた時に言わなかったの?」
「えーだって言ったらすぐに戻されちゃうじゃん」
「じゃんって……」
家に連れてきた時よりも成長してると言ってもまだ子猫だし、もっとこう赤ちゃんみたいなイメージを持っていたからギャップがすごい……。