千景くんは魔法使い
「言っとくけど、僕は人間にするともう5歳だよ。一年もすれば17歳だし、花奈ちゃんより大人になるスピードは速いよ」
「そ、そうなの?」
喋れることと二重にビックリしている。
「僕ね、千景くんの魔法がどうして暴走したのか知ってるよ」
「え、本当に?」
私は前のめりになって、ちっちに近づく。
「教えてほしい?」
目一杯に首を縦に振ると、ちっちは「ん」と自分の右手を出した。その仕草に可愛い!と和んでいると……。
「やわらか若鳥のささみちょうだい」
「……へ?」
「タダじゃ教えてあげないよ」
まさかご飯をおねだりされるとは思ってなかった。
「ダ、ダメだよ。晩ごはん食べたでしょ?」
「さ・さ・み」
「ダメだって……」
「くれないと教えないから」
「……うう……」
ちっちの飼い主として、ここで甘やかしたらいけないと強く思ったけれど、結局私はその駆け引きに負けてしまった。