千景くんは魔法使い
「魔法っていうのはね、その人の心と繋がっているものなんだよ」
ちっちは満足そうにささみを食べながら教えてくれた。
「その人の心……?」
「うん。正確には心が魔法というものを芽生えさせてしまうって言ったほうがいいのかな。だからね、あの時の千景くんの心はひどく乱れてた。そのせいで魔法が暴走したってわけだよ」
じゃあ……私のせいでもあったってこと?
「で、でもどうして、ちっちがそんなこと知ってるの?」
「魔女と黒猫っていうのは、昔から近い関係にあるからね。誰かに教えられなくても本能で魔法のことはわかるんだよ」
ささみが食べ終わる頃には、ちっちはペロペロと顔を洗っていた。
心が魔法を芽生えさせるのなら、やっぱりそれなりのきっかけがあったということだ。
考えられることは、ひとつしか思い付かない。
「千景くん、サッカーを辞めてから魔法が使えるようになったって言ってたんだ。ってことは、それが引き金になって魔法使いになったってことだよね?」
「たぶんそうだろうね。魔法は寂しさとか悔しさとか苦しさに反応しやすい。あるいは、自分への戒めの意味で魔法が使えるようになる人もいる。千景くんはそっちかもね」
ちっちの言葉が、妙にストンと府に落ちていた。