千景くんは魔法使い



千景くんは魔法が使えるのに、自分のためには使わない。

魔法を使えば後悔してることを軽くすることもできるかもしれないのに……。まるで自分への罰みたいにずっと痛みを抱えたままだ。

「昼間の千景くんは怒りでコントロールを失っていたけど、きっと魔法の暴走はまた起きると思うよ」

「……え?」

「魔法は、その力を日に日に強めていくものだから。このままだと千景くんは魔法に支配されてしまうかもしれないね」

ちっちの言葉に、ゾクッと背筋が寒くなった。

「ど、どうすればいいの?」

「それは僕にもわからない。でも花奈ちゃんなら千景くんのことを助けられると思う」

「……私が?」

「僕の命を救ってくれた千景くんのことをお願いね、花奈ちゃん」


――翌朝。ちっちは普通の猫に戻っていた。

いくら話しかけても「ニャア」しか言わない。

昨日のことは夢だったんだろうか?

ぼんやりとしながらゴミ箱を見ると、やわらか若鳥のささみの袋が捨てられていた。

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