そして、次の世界へ。
そして彼の端整な顔が
ぱぁっと喜びに染まる。

「篠田、俺だって分かったの?
めっちゃ嬉しい!」

わいわいとはしゃぐ彼に周りの
クラスメートはあんぐりと
口を開けて呆然としていた。

なんで彼がそんなに喜んでいるのか
分からないんだろう。

私にだって分からない。

緘波くんって、不思議だ。

そう思った。

クラスメートたちは緘波くんを
横目で見やりながら自分たちの
会話に戻っていった。

相藤さんは少し呆然としていたけれど
ハッとしたように彼女が中心の
グループの話の輪の中に入っていく。

教室に、平穏が戻った。

私は黒目だけをそっと動かして
教室の前の方で他の男子と
チャラけている緘波くんを見る。
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