そして、次の世界へ。
口の端が少しだけ
不器用につり上がる。

笑っている、つもり。

鏡で見れば唇がひきつっている
だけに見えるのは知ってるけれど、

家族以外の前ではこんな笑い方しか
出来ないんだ。

坂井さんが私の席の前に
椅子を持ってきて座る。

頬杖をついてこちらを見る
彼女は目を縁取る長いまつげや
大きな瞳がとても可愛い。

いいなぁ、坂井さん。可愛くて。

見とれていると坂井さんが
私の方を見てため息をついた。

「いいなぁ、篠ちゃんは可愛くて。」

その言葉に、私は驚いた。
坂井さんの方が全然可愛いのに。

2回まばたきすると彼女は
ふふっと笑った。
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