そして、次の世界へ。
私だって、自分の意思で
立ち止まっているわけじゃない。

動けない、話せない、ただそれだけ。

さっきまで当たり前のように
動いていた体が、話していた喉が、
突然その動きをやめてしまう。

1度そうなってしまったら、
そこから前に進むことは出来ないし
声を出すことも出来なくなるんだ。

誰か、誰でもいいから教室まで
連れていってくれないかな...。

次のクラスメートも私の方に
視線を流しただけで私を放置して
過ぎ去ってしまう。

どうしようかな、と考えていると
後ろから明るい声がした。

「あ、篠田じゃん。
おはよ、元気?
俺が教室まで連れてくよ。」

委員長なのにチャラい緘波君だ。

チャラいのに委員長、というべきか。

緘波君は靴を履き替えてこちらに
歩いてくると私の背中をぐいぐいと
後ろから力を入れて押して
教室まで連れていってくれた。
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