そして、次の世界へ。
大丈夫だよ、というふうに
1度目を閉じると彼はほっとした
ように笑って私の手を取った。

「よっこらしょっと。」

私を引っ張りあげて立たせると
スカートをはらってくれる。

「これで、綺麗だな。
じゃあまた明日、学校で。」

彼はひらっと手を振ると
弟を連れて去っていく。

彼のカバンについている
キーホルダーがゆらゆらと揺れた。

緘波くんって、弟がいるんだ。

知らなかったな。

クラスメートと関わりが薄いから
こうやって誰かのことを知るのは
珍しいこと。

少しだけ、嬉しくなった。

「ごめーん。店員さんが
レジ打ち間違っちゃって。
買い物おわったよー。」
< 43 / 45 >

この作品をシェア

pagetop