そして、次の世界へ。
ありがとう、の意味を込めて
小さく頭を下げると緘波君は
ニッと笑って親指をぴんとたてる。

「気にすんなって。篠田と俺は
"緘同盟"で結ばれた仲だろ?」

緘同盟。

私が背負う場面緘黙症という病気と
緘波君の名字の緘という漢字が、

読み方は違えど同じだということで
緘波君が初めて話しかけてきてくれた
ときにその話になったんだ。

緘波君は優しいからクラスの
人気者で信頼されている。

私には、そんな緘波君が
キラキラと眩しく光って見えた。

自分とは縁のない、遠い存在。

そんなイメージ。

だけど緘波君はフレンドリーで、
こうしていつも私を教室まで
連れていってくれて、休み時間に
たまに話しかけてくれる。
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