僕も好きだって言ったら?



思った以上に人がいる。
あの人を見つけるのは至難の業かもしれない。


「ねえ、今日これが終わったらご飯に行かない?」
「今日こそ遊びに行こうよ」


帰ってしまおうかと思っていたら、近くで男の声が聞こえて来た。


誰か誘われていて、大学ならこういうことがあるのか、なんて思いながら見回してみる。


「遠慮します」


誘われた人は冷たい声で断った。


かっこいい人……


「え……」


僕はその冷たい声の主を見つけてしまった。
あの人だ。


姉さんが言っていたのは嘘じゃなかったらしい。


見たことがないくらい、目に光がない。


僕が彼女を凝視しすぎたせいか、彼女が僕に気付いた。


みるみる明るくなっていく。
だけど、すぐに目を逸らした。


あの日以来会っていないのだから、こういう反応は当然か。


「どうしたの?」
「もしかして知り合い?」


男たちは断られたくせに、彼女に言い寄っている。


僕はそれが面白くなくて、間に割って入る。


「僕の彼女に近寄らないでもらえますか」
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