僕も好きだって言ったら?
「……柔らかかった」


少し思い出すだけでも頬が熱くなる。


彼女が僕をからかってやっていることだとわかりきっているからこそ、彼女の前で素直になるわけにはいかなかったが。


内心、混乱していた。
高校三年生男子ともなると、気にならないほうがおかしいだろう。


しかし不可抗力だ。
あれは、あの人が引っ付いてきたから、当たったんだ。


僕は何もしてない。


思い返してみると、やはり呆れてため息が出る。


確かもうすぐ二十一歳の誕生日を迎えると聞いた。
それなのに、年下をからかうようなことをして……


本当に大人と言えるのか、あの人は。


もう一度ため息をつこうとしたとき、ノックと同時にドアが開いた。


誰が入って来たのか確かめようと体を起こそうとしたけど、入って来たその人が僕の上に乗って来たせいで起き上がれなかった。


「……何してるんです」


入って来たのは、あの人だ。


あと数センチで唇が触れてしまうのではないかというところまで、近付いてくる。


「弟君がベッドの上にいたから、乗ってみた」


……ちょっと何言っているのかわからない。
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