僕も好きだって言ったら?
「お泊りするの。一晩中一緒にいられるよ」


冗談じゃない。
たった数時間でも嫌で嫌で仕方ないのに、一晩中だなんて、冗談じゃない。


「……もちろん、姉さんの部屋で寝るんですよね?」
「ううん、この部屋」


出て行け。
そして今すぐ帰れ。


一緒に寝るとか、何されるかわかったもんじゃない。


「晩ご飯は私が作るから、楽しみにしててね」


そして彼女はやっと部屋を出て行った。


僕に逃げ道はないのか。
どうしても彼女に捕まってしまうのか。


ああ、憂鬱だ。
最悪だ。


もういっそのこと、このまま寝てしまおうか。


いや、その間にあの人が僕の部屋に来ることのほうが嫌だ。


僕は諦めて私服に着替え、リビングに向かった。





「さあさあ、弟君。愛のこもった手作り料理ですよ」


食卓からいい匂いがしてくると思ったら、腕を引かれて席に座らされた。


彼女は僕の目の前に座る。


その隣で姉さんが一人で夕飯を食べ始めた。


彼女の目が早く食べてと言っている。


僕は箸を手に取り、ハンバーグに箸を通す。
一口サイズに切り、口に含む。


「……うま」


思わず零れた言葉を、彼女はしっかりと聞き取っていた。


両手を頬に当てて笑っている。


ポテトサラダもみそ汁もおいしくて、あっという間に食べ終えてしまった。
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