僕も好きだって言ったら?
「……はい?」


今、なんて?


「好き。言ってなかったなと思って」


まっすぐ目を見つめてくる。


……いやいやいや。
またいつものやつだろ。


これを本気にしたら、今まで以上に笑われるに決まってる。


というか、姉さんだったら一方的にやられるのも仕方ないと思えるが、この人は違う。


少しくらい仕返ししてもいいだろう。


「……僕も好きだって言ったら?」


見つめ返して言うと、彼女は目を見開いた。


仕返し成功だ。


彼女がゆっくりと僕から視線を外す。
両手で顔を覆った。


「……照れる」


耳まで赤くして、本当に照れているんだとわかる。
少し手が下がると、目が合った。


「かわ……」


僕は慌てて口を塞いだ。


待て待て?
今僕は何を……


彼女を可愛いだって?


いや、可愛いさ。
こんな風に照れるなんて思っていなかったから、余計に可愛いと思ったよ。


「弟君?」


僕の顔を覗き込んでくる、その普通の表情ですら、直視できなくなった。


「いや……今の、嘘……なんで」


彼女はあからさまに落ち込んだ。


「嘘……そうだよね。弟君は私のことなんて、興味ないもんね」
「あ……」


彼女を傷つけた罪悪感から、謝りたくなる。
だけど、あのとき僕が言ったのは、間違いなく嘘だ。
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