僕も好きだって言ったら?
「あの」
「ごめんね、弟君。それ食べ終えたら洗っておいてくれるかな」


彼女は僕の言葉を聞いてくれなくて、食卓を離れた。


あんな作り笑顔、初めて見た。
僕が傷つけた……よな。


いやだって、まさか本気で僕のことを好きであんなことをしていたとは、誰が想像できるんだよ。


なんて、言い訳だよな。


あの人は真剣に告白してきたのに、僕は嘘で返した。


こんな最低なことはない。
あとで謝ろう。





「あいつならもう帰ったよ」


翌朝、姉さんがコーヒーを飲みながら教えてくれた。


あの人はあれ以降、僕のところに来なくて、謝ることができなかった。
朝なら会うだろうと思っていたのに……


避けられた、か……


「あんた、あいつに何かしたの?」
「……なんで」


間違いなく僕がやらかしたが、それをわざわざ姉さんに言う必要はない。


「昨日の夜、泣いてたから」


その事実は想像以上に僕の心に突き刺さった。


「あいつが泣く理由はあんた以外にないから」
「そんなわけないだろ」
「あいつ、基本的に誰にも興味ないし、無感情だから」


姉さんは、あの人の話をしているんだよな……?


「ま、信じられないならうちの大学に来てみな。すぐにわかるから」
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