君だけは違うから



「なぎさ!」


!!


ぐいっ!


すごい力で後ろに引っ張られる


「渚に触らないで」



ふわっと香るのは嗅ぎ慣れた匂い


耳に届くのは聞き慣れた声



「健?」


なんで、ここに

ていうか、今なんて


「行くよ」


ぐんっと引っ張られて


引きずるように進んでいく


ぽかんとした杉崎が遠ざかっていく


なんで、え?


引かれる手の前方でズカズカと大股で進む健


どういうこと?なんで?



「健!?ねぇどうしたの健」


「いいから黙って」


思ったよりも怒りの現れた声色に思わず言葉を飲み込む


なんで


どうしてここにいるの


さっきなんて言ったの


足を進めるたびに疑問が増えていく


だけど、ただ健の背中を見るしかなくて


見慣れてるはずの背中


歩くスピードはもうめっちゃ早くって引きずられるみたいについていく


長い足、広い背中、見上げないと見えない後頭部


…いつのまにか


こんなに変わってたんだ


私も、健も


< 20 / 29 >

この作品をシェア

pagetop