君だけは違うから
ガチャ
…は?
ここ、え?健の家?
私の家のすぐ隣
幼馴染みというくらいだからこの距離ではあるけれど
数回しか来たことのない健の家
な、え?
なんでここ?
「た、健?どこいくつもり?」
私の問いに答えることなく乱暴に靴を脱ぎ、反射的に私も脱ぎ
しんとした家の中を進んでいく
健の両親は共働きだから家の中は誰もいない
だからよく私の家に来ていた
でも、今は、健の家
それも、入ったことがあったかどうかわからない健の部屋に真っ直ぐ進んでいく
な、なんだ
なんで私ここに連れてこられて…
落ち着いた、大人っぽい殺風景な健の部屋
でもしっかり見ることもできず視界が大きく傾く
ドサッ
「わっ!」
紺色のベットの上、そこに横たわる私と覆いかぶさるようにまたがる健
顔の横に健の両手がある
ど、どういう状況!?
ドッドッと激しい音を立てる心臓
「健っ」
「なんで…」
え?
初めて見る角度からの健の顔、表情
なんでそんなに苦しそうな顔をしてるの?
息がしづらい…胸が詰まる
「なぎさ…」
…私のことを渚と呼ぶのはいつも泣いてる時だけだった
なのになんで、そんな怒ってるような苦しそうな表情で名前を呼ぶんだろう
「健?どうしたの?」
この状況は…
もっと焦るべきだとは思うんだけど
こんな幼馴染みを目の前にしたら、ドキドキや、恋しいや愛しいという感情よりも
笑って欲しいって思う
そんな顔しないで