君だけは違うから

「渚は…あいつが好きなの？」


…へ？


「あの男が好きなの？告白してきたのあいつでしょ？」


え、なんで


「渚はあの人と付き合うの？あいつのものになるの？」


「健？」


「嫌だよ…」


え？


「渚が誰かのものになるなんて無理…耐えらんない」


なに…それ


どういうこと？


「健は…私のこと好きじゃないんでしょ？だったら私が誰と付き合おうが関係ないはずじゃ」


だって…私の告白は一度だって


「わかってる…自分でもよくわからない…でも理由とかどうでも良い、ただ渚を誰にも渡したくない」


なに言って


「俺馬鹿だからさ、渚も知ってるでしょ？
自分の気持ちの変化にだって気づかないくらい馬鹿だからさ…ただ渚が自分のところから離れていかないように捕まえておくことしかできないんだよ…それも間違ったやり方で」


…


「もう何がなんだかわからない…でも、お願いだからあいつと付き合わないで…俺を好きなままでいて…お願い」


なんて弱々しい声を出すんだろう


なんて…馬鹿なんだろう


「本当…馬鹿だね。健は」


「…なぎさ？」


「私はずっと健が好きなんだよ？人の気持ちってそう簡単には変わらないの。諦めよう諦めようって思っても結局ズルズルと…私は一度も健への恋心をやめれたことなんてないよ」


どれだけやめようと思っても


叶わないってわかっててもやめられないんだから仕方ない


恋ってそういうものでしょ？


「だからそんなお願いされなくても私の中は健でいっぱいなの」


きっと…いつまでも


「…渚」


「健、好きだよ。大好き」


そういえば…


ちゃんと言ったことはなかったかもしれない


『好き』をちゃんと言葉にするのって難しい


健を目の前にしてその言葉を口にすると実感する


たとえ…この気持ちが報われることはないとわかっていても


私の気持ちは変えられないくらい…この人に恋してるんだ


「なぎさ」


ん？


「ごめん」


え


眉間に力が入っている


長い睫毛のかかった閉じたまぶた


その顔が近づいてきたと思ったら、唇に何かが合わさる感触


キスされたと理解するのには思ったよりも時間がかからなかった


だって私が受け入れてしまったから


すんなりと、口づけを許してしまったから