君だけは違うから



長いようで短い時間


離れた唇、その次に視界に入る熱を帯びた健の瞳





「…なんで」



なんでキスしたの?


健は私のこと、好きじゃないんじゃないの


私も案外馬鹿だから都合のいい解釈をしてしまうよ?


だけどその次に耳にする言葉は…


私が望んだものではなかった



「…わからない」






わからない…か


そうだよね…だって健だし


何を期待してたんだろう…


なんて…言ってもらえると思ったの?



「…健にとってはなんでもないキスでもさ…私にとっては好きな人からのキスなんだよ」


だから…


「簡単に…そういうことしないでよ」


視界がぼやける


「っ…渚」


仰向けに寝ているから頬を伝わずにこめかみに落ちていく涙

よりにもよって…健の前で泣いてしまうなんて


「ごめっ」


なんとか健の下から抜け出そうと体を動かした


しかし


グっ


体にかかる圧

私の体を抱きすくめるように抑る健


「っ健…はなして」


「やだ」


なんで


「だからそういうことしないでって…」


「俺にとっても、なんでもないものなんかじゃない」





「俺だって、ただのキスだなんて思ってない…
自分に制御が効かないんだよ
渚だからした、渚だからここに連れてきた…渚だから」


抱きしめる腕に力が入った


「誰にも渡したくないくらいに…好きなんだ」


…え


今…


時差でパッと私から離れ、自分の口元を覆う健


「え、は?今…おれ」


え、まさかの無自覚?


「なんて言った…す、好き?」


そう繰り返してブワァァっと顔を赤くする


私と同じ反応



…え、健が私を好きってこと?


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