一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
派手な化粧に、露出の高い服。
覚えたてのお酒は私を大胆にし、彼からみれば遊び慣れた女に見えていたのかもしれない。
でも……。
朝起きたらそこに彼の姿はなかった。ベッドサイドにはかなりの額のお金があっただけだった。

名前も、連絡先もなく一人私は呆然としたのを今でも覚えている。

幸せな朝を想像していた自分に嫌気がさし、自己嫌悪しかなかった。
そこにお金を置いておくわけにもいかず、どうしようもできなかったお金は封筒にいれて使わずに置いてある。
自分を売ったみたいで、あの時の時間をすべて汚されたようで手を付けられなかった。


もうあのBARにも行く気にはならず、それからというもの、すっぱりと夜遊びから足を洗い二度と男なんかに騙されない。
そう思って生きてきた。

そこまで思ったところでハッと時計を見て、私は慌てて立ち上がった。
6畳ほどしかない寝室のクローゼットを開けると、いつも通りのジーパンに着替えて髪をほどいた。

「急がなきゃ」
自分に言い聞かすように、気分を入れ替えると私は自電車の鍵を手にした。
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