一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
そんな中、一緒に住むようになり、初めて咲綾の素顔を見ることがあった。
「咲綾、待って」
あの時咄嗟に呼び止めたのは、もう一度はっきりと咲綾の顔をみたかったかもしれない。
ゆっくりと振り返った瞳をみて、急によみがえるあの時の彼女。
派手な化粧はしていないが、いつもフレームで隠れていた瞳と長くふわりとおろされた髪。
一気にあの夜、柔らかな髪に手を差し入れた記憶が蘇る。
会社や今まで外で会っていた咲綾とは別人のように見えた。
まさか。
しかしなんの核心もないまま、心地よい咲綾と真由ちゃんとの時間は過ぎていく。
しかし、一度そう思ってしまえば、少しずつ俺の中の疑問は膨れ上がる。
初めの明らかな俺に対する拒絶は、咲綾は俺のことを覚えていたからではないか?