一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「そんな……」
そんなことをしても意味はない。
これ以上好きになっても、真翔さんに気持ちがなければ辛いだけだ。
ふと、会社での女子社員の言葉を思い出す。
『忘れられない女の人がいたらしいよ』
その人の存在はいいのだろうか?
もう忘れたのだろうか?
真由のパパとしては、一生縁は切れないかもしれないが、真翔さんの幸せを私の身勝手で奪うことなど許されないのではないか。
真翔さんは優しい。
その優しさは残酷なだけだ。
「そんなこと、ダメですよ」
ようやく言葉を発した私に、礼華さんが何かを言おうとしたところで、真翔さんが私を呼んだ。
「咲綾、真由眠そうだ」
話し込んでいた私は時計に視線を向けると、21時をまわっていた。
「すみません。こんな遅くまで」
「いいのよ。明日は休みだし気にしないで。お風呂入もれちゃいましょう」
慌てて立ち上がった私に、礼華さんもそう言うと、亜里沙ちゃんと副社長のもとへと歩いて行った。