一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
真壁さんと別れ、役員フロアの奥にある専務室の前で私は足を止めた。
ゴクリと唾液を飲み込むと、私は専務室をノックする。

「どうぞ」
柔らかな声が聞こえ、それだけで私の心の中は落ち着かなくなる。
こんな調子でどうするの。
私は必死に昔の仕事を思い出し、秘書の仮面を張り付けた。

「失礼いたします」
静かに頭を下げた私に、専務の顔は見えないがすぐに声が聞こえた。

「本当に申し訳なかったね」
いきなりの謝罪に私は訳がわからず顔を上げた。

「本当に事務希望だったんだね」
あの後、私の条件などをきちんと確認したのだろ。
「はい。なので……」
ここで配置換えをしてもらえるならばその方がいい。

言葉を発した私だったが、専務の声で遮られる。
「ここしばらく新しい秘書が来ても仕事にならなくて。だからこそそんな君にぜひお願いしたんだ」
真摯に言われた言葉だったが、その意味が分かたず私は問いかけた。

「申し訳ありません。言っている意味がよく……」
そう言った私に、専務は一人苦笑した。
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