一夜の過ちで授かったら、極上御曹司に娘ごとたっぷり溺愛されています
「どうして?」
呟くように言った私に、お母さんが真っすぐに私を見た。
「バカね。今日孫か来るって聞いたら張り切るわよ。お母さんだって」
「え? 知っていたの?」
私の驚いた言葉に、お母さんは小さく頷いた。
「何度も何度も、電話をくれたわよ。真翔さん。すべての責任は私にありますって。話は後よ。ほら冷めちゃう。これ持っていきなさい」
真由の大好きな唐揚げがたくさんのったお皿を持って、私は居間のガラス戸に手をかけた。
「本当に申し訳ありませんでした」
聞こえてきた真翔さんの声に、私は開けようとしていた手を止める。
「頭を上げなさい。もうその謝罪は聞き飽きた」
お父さんはいつもの席に座り、手を組み低く言葉を発する。
「はい」
静かに顔を上げた真翔さんは、柔らかな笑顔を浮かべた。
「今日、こうして伺うまでお許しを頂けるか私も不安でした。しかし、こうしてお迎えいただき本当にありがとうございます」
その言葉に、お父さんは少し表情を歪めた。
「これは母さんが勝手に…」
「親父、嘘つくなよ。その椅子だって親父が買ってきたくせに」
真由が座っている椅子を将人が指をさす。
「将人! 煩い」
苦虫を潰したようにお父さんは言うと、そっぽを向いてしまった。